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 駅まで彼が送ってくれた。イルミネーションで飾られた、歩道を通り抜ける。
 「コッチ。」

 私の手を取って走り出す。立ち止まってパッと手を離す。
 「あなたが嫌なら、手はつながないです。」

 「だ、大丈夫。」
 大丈夫という返事も失礼だが、他によくわからない。したいとも言えないだろ、してくれってお願いもおかしくね?なんとなくお手々つないで駅に着く。
 「とても楽しかった。ありがとう。」

 そういって私の頬にキスをして、バイバイ。
 
 それから何ヶ月か過ぎ、私は仕事につき、忙しい中2回だけ会えた。私の嫌いな質問。
 「次はいつ会おう?あなたにイツアエル?」

 わからないんだよ。会いたくてもあえないの。仕事の休みは土日取るのが難しい。いつもいつも無理どころか、新卒で休み希望なんて出せないの。休みの日も病院行ったり、事で精一杯の毎日で、せっかくの休みを潰すのが、どうしてもしんどかった。
 彼は私が会いたくないんだと。そう、思っていた。
 同時に私も、彼は私の事なんて好きではないと、思っていた。今更ながら、こんな外見、こんな性格、頭も悪い、どこにも自信なんてなかった。彼が遠くにいけばいくほど、近くにいる人がいいんじゃないかと思うだけ。いつかはアメリカに帰ってしまうわけだ。なんか、どうしていいのかよくわからなかった。
 
 彼は英文で次のように綴っていた。
 「僕はあなたは賢くて、内気な恥ずかしがりやで、かわいい人だと思う。君もすでに知っていると思うけど、僕はあなたのことを好きだと、何回も表現しているでしょう?日本人は回りくどい感じで、相手に物を伝える事も多い。でも、だからこそ、僕には伝わりにくかったり、わかりづらい。」
 「君の伝えたいことを間違って理解しないように、僕はただいつでもはっきりと君に伝えた。君が僕のこと嫌いなら、それでいい。もう、連絡しないで。」

 好きだったのに、どうしていいかわからなくて、付き合うとか、ハッキリさせることが恐くって。
 ただの友達でいることで、私は君を、怒らせた。
 
 それから別の人に出会い、別れ、ふと彼の手紙を見つけ懐かしくなり、届くかわからないメールをした。一番してはいけなかったのに、ホント、私は酷い奴だった。でも、彼にメールの返事は期待していなかった。読んでくれなくてもよかった。ただただ、その時の彼の気持ちがわかり、メールしたかった。そして、言い訳したかった。許して欲しかった。
 ホントに会うのは大変だったと、仕事も辛かったと、あなたに会いたかったと、酷いことをしたと、手紙を読むのにも何時間、書くのにも何時間も費やさなければかけなかったこと、ちゃんと理解もできていなかったこと、たくさんの言い訳。

 もう、5年も経っていた。でもやっぱり5年経たなくては言えないことだった。

 「誰にだって、強いところもあれば弱いところもある。君は5年かけて、その弱いところに気付くことができたんだよ。わからないとできないけれど、弱いところに気付けたからこそ、それを克服できるってことでしょう?」
 「君に本当のことを言ってもらうことなんて恐くないけど、言ってもらえない方がつらいんだよ。」 

 私はいつだって、相手を思いやることができなかった。私は彼と、どうなりたかったんだろう?

 ”Im just trying to be direct so I do not misunderstand your message.”

 もしも・・・

   

 
 彼は駅に現れると、きょろきょろしてチケット売り場の方に向かおうとしていた。思わず初めて見る外人にビックリして隠れてしまった私。んなことしてる場合じゃないので、勇気を振り絞り呼びかけた。彼はスッと振り返り、おもっきし外人風あいさつをしてくれた。まだ、シェイクハンドに不慣れな私。

 電車のわからない方向音痴な日本人のために、まだ日本に来たてのアメリカ人が道を聞き、誘導してくれる。逆じゃねーか?普通。そんな事を気にもせず、ちゃんとどこいくかまで決めていてくれた。そうか!会うだけじゃダメだったんだね、どっか行くのか!初デートは名古屋港水族館ですか。あ、あたしちゃんとクリスマス時期に、好きな人と水族館に行ったことあったんだわ。でも閉まってんじゃないの?閉館だよ。
 「もみじ、コレを読んで下さい。アイテルヨ。」

 英文で説明を理解する彼、日本語なのに飲み込めない私。あ・・・ホントだ、書いてある。

 水族館に向かう2人。恋人でもなければある意味初対面。変な距離を保ちながらぐるぐる観賞。
 「何見たい?」 

 「イルカショー。」
 なんも考えず、いるか見たさみ言ったんだ。そうだよ、この時真冬ですよ。イルカショーは屋外なのさ。アホな選択してしまった。中からでも見れたけど、今更引き下がるのも嫌だ。寒いし人も少ないから、良い席で見てやれーーー。このときはイッパイおしゃべりして(日本語で)楽しかった。

 最後のペンギンは見られず、水族館を後にした。
 
 そろそろお腹も空いてきた。外食もしたことなかったんで、どんな店があるのかすらしらないし、店で何が食えるんじゃっちゅうレベル。注文の仕方もわからないし、メニューもなにがどこにあるのかさっぱりなわけ。だから、彼の知っているアメリカにもある?お店に行くことに。しかも”ハローカフェ”に行くかと聞かれている。なんとも陽気なお店だねぇと思ったら、着いたところはハードロックカフェだった。なんちゅーすばらしい発音だ!そんなことに感激。

 でも笑えるぐらい、あそこはまさにハードロックカフェだった。クリスマス時期だし、クリスマスソングを生で歌っていたりなんかして、素敵だった。そこで彼の大学の友達に何人かに会ってしまい、ちょーこっぱずかしかったのを今も忘れない。彼らアメリカンなくせになまりのために、日本語でたどたど会話するし。しかも席隣・・・。そこでアメリカサイズの気持ち悪いほどでかいサンドイッチを頼んでしまった私。めっちゃ食いにくいし、汚い私!?デートの時のミルフィーユより、でかい分タチが悪い。まぁ、そんなこと気にもされなかったようだけど、私が気にした。

 お店を出るとお外は真っ暗。クリスマスのライトアップで人が賑わい、カップル達がいーちゃいちゃ。
 
 いつが都合良い?まだ学生だった私は休みに入って、すぐでなければ充分な余裕がなかった。寮は長い休みになると一旦閉めてしまうから。まだ付き合ってるわけでもない、会ったこともない、写真を見ただけの間柄。そんな彼と会うことになった。

 まだメールも携帯も普及し始めって感じだったから、そん時は外国のペンパル欲しくて雑誌に投稿した。もう半月以上経ったくらいか?ある日突然寮に一通のメールがアメリカから届いた。明らかに私宛、寮の住所もあっている。しかし、知らない人だ。もう全然連絡なかったから、何の雑誌に投稿したのかすら覚えていなかった。全部英語で書かれていたから、その時の私はたぶんあんま理解しないまま、出したんだろう。どっからどーみても、お相手捜しっぽい感じ。

 ペンパル?じゃねーの?でも初めての生の英語に生のアメリカからの手紙に、私の心はうっきうき。辞書を引き引き彼の手紙の内容を何時間もかけて読んだ。あれ?あたしの事知らないの?彼女探してるみたいにズバっと書いてある、で、写真付きで返事くれと。しかも、もし僕に興味があったらそれに対して返事を書くと。あれ?あたしに選ぶ権利ないんだ?結構男前な上、学歴もあり、普通にいい男だった。面白いし返事してみよう。続けるつもりでもなかったが、おもしろくって返事してから、何回かやりとりし続くようになった。怪しいなと思うものの、彼の言ってることは矛盾したところもなく、本当っぽい。ある日、日本の大学へ通うということで日本へ来ることになった。

 出来れば会いたくなかった。毎日の実習がしんどくて辛くてやめたくて、でも2週間、3週間あと頑張れば手紙が届くんだ。そう思うと嬉しくて、それだけを楽しみに学生生活を送っていたくらい。大好きなアメリかからの便り、青い目パツキンの男前、それだけで私は誰でもよかったのかもしれないと思うほど、毎日が楽しくって仕方なかった。毎日毎日手紙が届くのを待っていた。
 
 でも会うと夢が壊れてしまうかもしんない、しかも会話できないじゃん。英語しゃべれないっていってるのに、大丈夫だという。ってゆーか、お前日本語しゃべれないじゃん!意味わかんないすこぶる楽天的な7歳年上のアメリカ人。それでも彼は、怪しい日本語のみで一生懸命会話してくれた、とてもやさしい人だったのだけれど。

 彼と初めてあったのは、クリスマスイブイブ。電車に乗ったことあんまなかったけれど、一応日本人なんで、アメリカ人の彼をこちらに来るように言うのは酷だろうと思い、自分が彼の住む県に行く事になった。デートなんて初めてで、何来てっていいのかわからないし、普通に寒いしズボンはきたかった。一緒の寮の友達が、私に男が出来た!っと、デートにそんなんあかん!絶対スカートで行くべきだと強く勧めた。でも私、スカート持ってなかったの・・・。
 彼女は自分のスカートを持ってきてくれ、ぶかぶかな中途半端なスカートに、これまた違う友達が用意してくれたベルトとつけ、なんとか女の子らしくしてもらった。

 みんなに送り出されて寮をでて、名古屋の駅で待ち合わせ。

 遠くから時間になってくる外人が、みんな彼に見えてしまう。ついに、彼が現れた。
 
 ある日珍しく彼から常識時間内に電話がかかってきた。彼は寮にいるらしく、わいわいしているのが聞こえてくる。どうしても飲み会をやって欲しいと後輩に頼まれた電話。好きな人と飲み会になんて行きたくないなんて言えるわけもなく。後輩が直接私に電話交渉。会ったことも見たこともない私のことを、一生懸命褒める。彼女が欲しくて一生懸命な人達に、彼女のことを忘れたい不憫な男がここに一人。もう、どうでもいいや、意外と私の友達はノリノリでおっけーしてくれた。でもあいつらがこっちに来てくれるというのは絶対条件に。だってもう、タクシーはごめんですから。

 結局計10人ちょいくらいになって、なんだかぐちゃらぐちゃらしたものの、楽しく過ごせたみたいだった。私はそこらで帰りたかったのに、一応幹事なんで帰らせてもらえずにまたも定番のカラオケに集合。そこはもう悲惨だった。みんな泥酔、酷いもんよ。ホントに仲の良いかわいい子達ばっかだたので、男達はさぞうはうはだった様子。今ならもったいなくて、見事に全部身も心もぶさい奴そろえてやるのによ。ふん。
 しかも、確実に酔った奴が確実に酔った私の友達を連れてラブホに行くという。お話するんだと。ラブホって談話するのに最適な場所だったかしら。どうでも良い友達ならホンマ行ってくれていんだけど、中のいい子だっただけになんか申し訳なくて。間違うならもっとカッコイイ男でなくてよいか!?相手の酔っぱらったバカ男に、話をするだけだからとなぜか私が説得され、彼女らは消えた。
 
 好きな彼もかなり最悪だった。一番かわいい女の子のとこにいっては浮かれて話し、最近振られた子のとこに行っては、どうやったら前の彼女を忘れられるんだろうとグダグダし、飲んで酔い、潰れた。
酔うだけ酔って、真夜中にやっと解散。みんな帰れないから乗ってきた車のとこまで私が全員一人で捨てるように送り、駐車場で奴らは夜を明かした。 
 私の友達はみんな家に来てわいわい。でもラブホに行った子が心配で、翌日仕事の子以外起きて待っていた。コンパの男どもがどーのこーの。彼女の連絡が来ないかとただただしゃべって待っていた。結局朝かなんかに、メールで帰ったという連絡が入った気がする。

 その後も仕事を終わる友達を待ち、私らはひたすらしゃべり続けていた。24時間起きてしゃべりっぱ。それでも、大事な友達をあんなわけわかんない奴らに紹介し、ラブホに持ってかれたんがことごとく申し訳なく、好きな彼があんなんで、急に悲しい気分になってきた。そんなとき、帰ったであろう連中からぞくぞくと友達やら私にメールが入る。飲酒運転にならんと、無事帰れたろうか、事故ってないかと心配してたのに、しょうもない内容。むかついて内容忘れた。真剣にあいつら琵琶湖に沈んでしまえばよかったのにと、心から思った。

 友達はそんな私の気持ちを察してか、「楽しかったよ。またこんな風にできたらいいね。」みたいなことを言ってくれた。でも、またなんて絶対嫌だと思う気持ちが大きくて、冗談でも受け入れられず、友達の言ってる意味はわかるんだけど、なんかバカらしくて悲しくて、号泣。仕事でも一切みんなの前で泣いた事なんてないもんだから、みんな必死でなぐさめてくれる。
 あまりにもむかついて、好きだった彼のメールも電話もそっから突然一切拒否した。一日に何十件と気持ち悪いほど毎日入ってくる。友達に説得され、電話にでることに。言い訳聞かされ、仲直り?それからもメールに酔っぱらい電話は相変わらず。変わったのは私の対応の冷たいこと。

 しだいに減るメールと電話。そんな時、ある日突然メールが入る。

 「もうメールしないよ。今まで邪魔してごめんね。」

 私、2年間も、邪魔されてたのか。
 何してんだろう私。
 好きな人が、できたのかな・・・

 あぁそうか、もぅ邪魔しないでってことか。
 君はきっと知ってたね、それでも私が好きだったのを。
 邪魔なのは、私の方だった。 

 ねぇねぇ、あんな奴のどこがよかったの?
 
 普通の思い出が、最悪の思い出が、最高の思い出が、
 それがあなたと作れたとき、

 すべては私の宝物。

 
 前回の飲み会の後から、毎日のように彼からメールや電話が来るようになる。ついでに嫌だった人からも電話とメールがかかってくる。もひとつおまけに、幹事の女の友達の方からも連絡がくる。私に海坊主からの連絡が来ていないかと?そしてあの日、彼女はいろんな意味で危険を犯し?彼を家に泊めたのに、彼に何もしてもらえず介抱してバイバイしたんだと。ぷぷぷーーー、やってもらいたくて消えたくせに、してもらえなかったんだと。クソ坊主に相手にされないなんて終わったな。
 ってゆーか、これまた聞いてないし。どうでもいいし、ほんんまどうでもいいけど、その海坊主も悪趣味だとおもうけど、この女も性格ブスだけでなく外見もさようなら。ほんまこんな2人、私からしたらどーでもいい!ってか、あのあとどうやって帰ったのか、帰れたのか聞いてよね。タクシー代いくらしたと思ってるん。実は彼女の引っ越しした先でのことだったので、ちょっとした遠出だったの。でも、乗せてくれるっつぅからさ!しつこい?何回でも反芻して怒れるよ私。
 
 それから、興味ないのに電話番号教えてしまった方に丁寧にお断りし、彼女の電話とメールは無視することに。他の蒸発しおった友達もそれ以来、私の中で無礼者として位置づけられ、疎遠に。

 気になる彼からのメールと電話だけを、大事に出る日が続いた。だんだんわかってくる、彼は酔っているのではないかと?まさかと思って聞いてみたら、メールは正気の時、電話は酔ったときに限りかけてくる。はぁ?べろべろでないにしても、私酔っぱらいの相手だったのか?
 
 「ちょっとでも酔ってないと、恥ずかしくてもみじちゃんとしゃべれないんだよ。」

 今思うと気持ち悪いが、こんなことでも、そうなのかなと思った。友達にも、そんな自分をさらけ出せる相手がもみじなんだからいいんだよなんて、訳の分からない助言をもらい、いい感じなのかなと思っていた。私から電話しても、なんだかんだと軽く理由つけて、すぐ切ったと思ったら、絶対自分から速攻かけ直してくれる。ご飯に行っても、今度おごってくれよと私が気を使わないように言って、結局私はお金なんて使わない。行きたいと言ったとこに連れて行ってくれ、遠いのに会いにだって来てくれるという。映画が好きな私に、映画を一緒に見に行こうと言ってくれる。

  会ったのは3,4回?でもやっぱり、電話は毎回若干酔っている。夜中にかかってくる、寝ようとした時にかかってくる、明け方の時もある。嫌がらせじゃないかと思うほど。ある日更に酔っていた。違う女の名前を連呼している。もう半年くらい経つのに、一番嫌な展開だ。酔ってるからペラペラペラ、振られた元カノの名前。
 「ごめんね、ごめんね、間違えちゃった。僕最低だよね。」
 なんていいつつ酔ってるからヘラヘラしている。そうだよ、キミ、最低なんだよ。

 「もみじちゃん優しいから〜、毎日電話したくなるんだよ〜。」
 忘れられない前の彼女。別れて一年程、忘れられなくて、どうしていいのかわからない。うっとぉしくて大好きな彼は、いつも私達の会話の肝心なところを、覚えてはいない。頭の中にいつもあるのは、忘れたいと願う彼女への想いでパンパンなんだ。出会ってからずっと、君の中にあったのは、私じゃない。それが、すごく悲しかった。
 
 こんな奴のどこがいい?